Japanese / English
/有明海研究 /低平地研究センター /低平地研究会 /国際低平地研究協会
文部科学省科学技術振興調整費「有明海生物生息環境の俯瞰型再生と実証試験」
佐賀大学グループ
囲繞堤と覆砂・耕耘混合による底質改善技術の実証実験と評価
〜囲繞堤と覆砂・耕耘混合による底質改善技術の実証実験〜
〜粗朶搦工による細粒分捕捉技術の開発と実証実験〜
佐賀大学グループ・囲繞堤と覆砂・耕耘混合による底質改善技術の実証実験と評価
■囲繞堤と覆砂・耕耘混合による底質改善技術の実証実験
研究目的

図−1 調査海域と観測地点

 底質悪化の著しい有明海湾奥部干潟域において、浚渫した底泥を袋詰めした土嚢による堤(囲繞堤)を構築し、その内部に覆設した底質改善材と底質を耕耘混合する「底質改善技術」を開発し、その効果を実証する。また、有明海湾奥部干潟海域(図−1)に観測塔を設置し、定点における定期的な調査観測を実施し、水質・流況の変化、底質改善への影響と効果を評価する。
研究概略
 当該研究の内容は、@浮泥・底泥の流動特性、底質特性等の調査検討、A「底質改善技術」による底質改善実証実験と効果の評価、の2項目により構成されている。@では、実験海域に観測塔と定点観測地点を設置(図−1)し、浮泥・底泥の流動特性、底質特性等を調査検討する。Aでは、試作する多軸耕耘混合機と底質改善材等を用いて、アゲマキの養殖稚貝を放流し1〜2年後の母貝集団となるコロニースポット(母貝集団が成長・棲息する集落)とその周辺域に産卵された浮遊幼生が着床・成育でき、かつ細粒泥質干潟域に着床・成長した稚貝の養殖場となる底質改善区を経済性評価の可能な規模で(平成19年度までに合計1.6ha)造成し、平成21年度まで継続したモニタリング調査を実施し、「底質改善技術」を実証評価する。
研究体制
林重徳 荒木宏之 山西博幸 杜延軍 日野剛徳
研究代表者
林重徳
佐賀大学低平地研究センター・教授
荒木宏之
佐賀大学低平地研究センター・教授
山西博幸
佐賀大学低平地研究センター・准教授
杜延軍
佐賀大学低平地研究センター・准教授
日野剛徳
佐賀大学低平地研究センター・講師
末次大輔 徳永貴久 柴錦春 有吉敏和 津城啓子
末次大輔
佐賀大学低平地研究センター・講師
徳永貴久
佐賀大学低平地研究センター・講師
柴錦春
佐賀大学理工学部都市工学科・教授
有吉敏和
佐賀県有明水産振興センター
津城啓子
佐賀県有明水産振興センター
牛原裕司        
牛原裕司
日本建設技術株式会社
研究成果

図−2 懸濁物質の輸送と観測塔方向断面の水温、塩分およびDOの等濃度分布

図−3 干潟域および底質改善区内のAVSの経時変化

図−4 季節的温度変化による間隙水移動メカニズム

図−5 底質改善区の構造

図−6 底質改善区の施工

図−7 アゲマキ稚貝の生残状況

@底質改善区や粗朶搦工周辺水域の長期的なモニタリングのために、観測塔3基と係留型の自動水理・水質測定装置を1基設置し、沖側から干潟上へ流出入する水質の変動特性を調査した。その結果、干潟周辺水域における流れ、水質および懸濁物質輸送特性や夏季の深水域における貧酸素水塊の挙動を把握した(図−2)。湾奥部干潟域における生物生息環境は、年々改善傾向にあり、深度10cmまでは生物が生息できるまでに改善していることを確認した(図−3)。干潟底泥の熱的特性に着目して、干潟底質の回復メカニズムについて調査検討した結果、底質内部における温度分布の発生により、間隙水の移動が生じている可能性があることが示唆された(図−4)。この現象は、潮汐による底泥内部の間隙水圧分布の発生に起因する間隙水の移動と並んで、底質の回復メカニズムの重要な要因の一つと考えられる。

A囲繞堤と覆砂・耕耘混合による底質改善技術を用いて、平成17年度にアゲマキ母貝のコロニースポットとなる底質改善区0.2haと平成18年度にアゲマキの放流・養殖場となる底質改善区0.8haを造成した(図−6)。平成17年度末(平成18年3月)に、改善区0.2haにアゲマキ人工稚貝を放流し、底質調査およびアゲマキ稚貝の生息調査を行った。その結果、大型台風の直撃・波浪により、改善区の底質に分級と数cmの砂層形成がみられるものの、生物の生息できる底質環境が維持されており、さらにアゲマキ稚貝の生残・成長も順調であることを確認した。また、平成18年10月には、同年3月に放流したアゲマキ人工稚貝の成熟と一部に放卵を確認し、底質改善の効果が実証されている(図−7)。

今後の取り組み
@平成18年度に引き続き、囲繞堤および粗朶搦工を含む干潟周辺水域での水理・水質および底質のモニタリングを実施する。さらにマイクロバブルによる貧酸素水塊の干潟域への流入抑制効果とそのモニタリングを実施する予定である。

A底質改善の経費を縮減し、より経済的かつ効果的な底質改善技術を確立するため、6パターンの底質改善区を造成し、比較検討する。特に、平成19年度の改善区造成においては、有明海の泥質干潟の底質環境が明白に回復に向かっていることを考慮して、底質改善材の配合割合を極力少なくするといった、有明海の環境に順応した底質改善区(種類)の施工を行う予定である。

■粗朶搦工による細粒分捕捉技術の開発と実証実験
研究目的
 底質悪化が著しくかつ、底質の細粒化・均質化が進行する有明海湾奥部干潟域において、古来の干拓技術の1つである粗朶搦(そだがらみ)の原理を応用した「細粒分捕捉技術(非常に細かな泥の粒子を捕まえ堆積させる技術)」を開発し、その効果を実証する。また、粗朶搦工により細粒子泥分が堆積した干潟域は、アゲマキの浮遊幼生が着床・成育する揺籃となることが期待されるもので、その効果を検証する。
研究概略
地形・地質的な特性から多量の土砂が流入する有明海においては、自然の干陸化は必然であり、自然の摂理に叶った干拓は必要とも言える。古来の干拓においては、細粒分を搦め堆積させるように粗朶工を設置し、干拓堤防を築造する方法が採られてきた。

 一方、今日の有明海では、河川流、残差流ならびに潮汐流の流速・流量の減少、海岸線の単純化や開発行為による浮泥・底泥の停滞堆積など、流入土砂の分級堆積メカニズムの減退を齎している。

 本研究は、この対応策の1つとして、粗朶搦の原理を用いて、潮汐流や残差流など自然の営力を利用した「細粒分捕捉技術」を開発し、その効果を実証する。また、粗朶搦工の材料として、流域に多量に分布する葦や竹材および間伐材の利用を検討する。さらに、この粗朶搦工域の泥質干潟はアゲマキ等の浮遊幼生の着床・成長の場となり得るもので、その効果を調査し評価する。

研究体制
林重徳 荒木宏之 山西博幸 杜延軍 日野剛徳
研究代表者
林重徳
佐賀大学低平地研究センター・教授
荒木宏之
佐賀大学低平地研究センター・教授
山西博幸
佐賀大学低平地研究センター・准教授
杜延軍
佐賀大学低平地研究センター・准教授
日野剛徳
佐賀大学低平地研究センター・講師
末次大輔 徳永貴久 松尾保成 牛原裕司  
末次大輔
佐賀大学低平地研究センター・講師
徳永貴久
佐賀大学低平地研究センター・講師
松尾保成
日本建設技術株式会社
牛原裕司
日本建設技術株式会社
研究成果

図−1 アゲマキの人工漁場システム

図−2 粗朶搦工の構造

図−3 粗朶搦工の配置

図−4 底泥堆積厚の変化量

図−5 流速の経時変化

図−6 水平方向のSS輸送量の経時変化

図−7 巣穴密度

図−8 沈降フラックスの鉛直分布

図−9 SS等濃度分布および流速ベクトル

図−10 AVSの空間分布

図−11 気泡噴流装置配置図

 有明海湾奥部飯田海岸に粗朶搦工を設置し、現地実験を行った。粗朶搦工とは、粗朶(伐り取った樹の枝)や竹を搦めた束および土嚢袋に詰めた牡蠣殻を数段重ねた構造物である。図−1に本研究で用いた粗朶搦工の概略図を示す。粗朶搦工No.1は2006年3月、粗朶搦工No.2は2007年3月に設置された。粗朶搦工No.1は総延長250m、高さ0.5m、粗朶搦工No.2は、総延長150m、高さ0.5mである。粗朶搦工No.1は竹および粗朶で構成されており、No.2には土嚢袋に詰めた牡蠣殻を使用した。

 1)粗朶搦工No.1における底泥堆積厚の変化量(2006年10月から2007年8月)は、粗朶搦工内平均値とBlank値ではほぼ同様の堆積厚変化を示していた。粗朶搦工内の竹部と粗朶部を比較すると、竹部の方が粗朶部に比べて約7cm多く堆積している。これは、粗朶部よりも竹部の方が流れをより遮蔽させたためと考えられる。台風(06年13号、07年4号)の通過時に堆積厚が急激に減少している。しかし、このような荒天時期を除いて、基本的に粗朶搦工内は懸濁物が堆積する傾向にあり、その堆積速度は0.54mm/dayと算出された。

 2)2006年10月13日(小潮)から31日(小潮)の約2週間SS輸送調査を行った。ここでSS輸送量は、各高さの水平方向のSSフラックスを算出してそれらを全水深にわたって積分したものである。水平方向のSS輸送量を時間積分して観測期間中の懸濁物の収支を評価した結果、+169kg/mと見積もられた。これは、粗朶搦工方向に懸濁物が輸送され、沈降・堆積していることを意味する。

 3)2007年7月11日に粗朶搦工No.2にて行った巣穴密度の調査結果より粗朶搦工外の巣穴密度は、約19個/m^2でありBlank地点とほぼ同程度であった。一方、粗朶搦工内は約53個/m^2であり、Blank地点と比べ2倍以上の密度であった。

今後の取り組み
 粗朶搦工および周辺海域において底質および底生生物に関するモニタリングを続ける。また、気泡噴流式細粒分捕捉補助システムを試作し、細粒子の沈降堆積を促進させる。
■リンク
研究機関名 ホームページ名
・低平地水圏環境学研究分野
 荒木研究室
佐賀大学低平地研究センター低平地水圏環境学研究分野
・低平地水圏環境学研究分野
 山西研究室
Hiroyuki YAMANISHI
・低平地地圏環境学研究分野
 林研究室
佐賀大学低平地研究センター・低平地地圏環境学研究分野
・低平地地圏環境学研究分野
 日野研究室
低平地湾海地盤の不思議−日野研究室−
・低平地湾海環境学研究分野
 末次研究室
佐賀大学低平地研究センター・低平地湾海環境学研究分野
・佐賀県有明水産振興センター 佐賀県:有明水産振興センター
・日本建設技術株式会社 ようこそ日本建設技術へ
研究協力機関 ホームページ名
・松尾建設株式会社 松尾建設株式会社
・株式会社ワイビーエム YBMホームページ
その他のリンク ホームページ名
・文部科学省 文部科学省ホームページ
・独立行政法人日本学術振興会 JSPS
・国立大学法人佐賀大学 国立大学法人佐賀大学
・国立大学法人佐賀大学
 有明海総合研究プロジェクト
有明海総合研究プロジェクト
・NPO有明海再生機構 NPO法人 有明海再生機構
All rights reserved.
Institute of Lowland Technology, Saga University, JAPAN
国立大学法人佐賀大学低平地研究センター 情報管理部会 部会長 日野剛徳
Webpage Initiate on November 10, 2008
/有明海研究 /低平地研究センター /低平地研究会 /国際低平地研究協会