河道内ガタ土の堆積メカニズムと水際植生管理に関する調査研究

山西博幸

1.はじめに

「沿岸環境研究分野」では,低平地沿岸域での「水環境」や「生態系」に着目した研究に取り組んでいる.ここ数年取り組んでいる具体的な課題は以下の通りである.
・河道内ガタ土の堆積メカニズムと水際植生管理に関する調査研究
・河口沿岸域での物質輸送と水域生態系保全に関する研究
・泥干潟での底泥および懸濁物輸送に関する研究
ここでは,有明海湾奥部に位置し,強混合型感潮河川として特異な環境場を有する六角川水系牛津川を調査対象フィールドとする一連の研究成果について報告する.

2.研究目的の概要

本研究は,河川管理を行う上で重要な課題である治水と環境に重点を置きながら,六角川の河道管理上特に重要な課題である感潮区間のガタ土の堆積状況とガタ土堆積進行に伴うヨシ等の植生繁茂状況を把握し,適切な河道断面の確保と河川生態系維持を実現するための新たな方策の提案を目指すものである.また,ガタ土堆積と連鎖しながら繁茂する植生のモニタリングとともに適正な植生管理についての考え方をまとめる.

3.H23年度の成果概要

3.1ガタ土堆積の長期モニタリングとその堆積メカニズム解明
(1)河道内の広域ガタ土調査から,ほぼ測定全域でガタ土堆積が観測され,その堆積速度は最大で2.8mm/day,測定全域平均で0.8mm/dayであった.また,4.5km左岸ガタ土の長期モニタリングから,非洪水期(10月~5月)にガタ土堆積が進行し,その速度は平均水位よりも高い地点で1.2(mm/day)となった.
(2)昨年度および今年度の斜面上での懸濁物質に関する調査結果より,満潮前の憩流時での急激なSS沈降と傾斜部での浮泥形成およびその流動の重要性を示した.これらの調査結果と断面内での懸濁物輸送に関する数値計算からガタ土堆積メカニズムを明らかにした.

図1 3.2 ヨシの分布に関する長期モニタリングとその生長特性
(1)ヨシの生長モニタリングをもとに,ヨシ群落の空間的な拡大・縮小に関する数理モデル(図中式(1))を構築し,現場データをもとに必要なパラメータを決定した.また,水際境界変化によるヨシ群落の密度分布を算出し,その生育限界長さがL=9~10mであることを示した.
(2)ガタ土とヨシの拡がりの観点から,ガタ土堆積容量とヨシの水際への移動との相関を示した.また,ガタ土堆積に伴うヨシの水際への進行速度は5ヶ月平均で2.6cm/dayとなったが,ヨシ水際端の移動速度はヨシの生長に応じて変化することも明らかにした.さらに,地下茎を主体とする栄養繁殖のヨシの特徴に基づき考案した地下茎遮蔽板によるヨシの生長抑制の効果を実証試験により示した.