安全安心の確保を目指した地域づくりに関する研究

木梨 真知子(都市・地域研究分野)

1.はじめに

本研究分野では,都市の安全安心の確保を目指したまちづくりに関する研究課題を設定している.平成27年度は,①犯罪に対する安心性,②子育て環境に関する安心性,③エネルギー問題に関する安心性,についての研究に取り組んだ.ここでは,犯罪に対する安心性に関する研究成果の概要について述べる.

2.犯罪に対する安心性と景観性の関連性に関する研究

(1)背景と目的

美しい景観に人々が集い,そこで安心して過ごすことができる都市環境を創造するためには,景観性と犯罪に対する安心感の関係性を考慮し,その両立を図ることが必要不可欠である.加えて,地域の特性を生かした景観形成には住民の意向を十分に反映させ,合意形成を図る必要がある.そこで本研究では,住民評価に基づき景観性と犯罪に対する安心の関係を明らかにするとともに,その両立を実現する景観形成方策を検討することを目的とした.

(2)研究方法

図1
図1 各方策における景観性と安心性の関係
研究対象地区は群馬県前橋市の広瀬川河畔地区である.当該地区では,2012年のワークショップを通して,良好な景観形成実現のための10方策が既に提案されている.本研究では,AHPを用いて10方策に対する地域住民の評価を景観性と犯罪に対する安心性の両面から明らかにした.分析に用いるデータは当該地区におけるアンケート調査から得た(回収数266,回収率14.0%).

(3)結果

図1より,① 景観性と安心性が両立関係にある方策としては,既存の景観をそのまま生かした取り組みが選定される傾向にある.一方,両者ともに低評価である方策としては,間接的かつ一方向的な取り組みが選定される傾向にある.② 安心性のみに評価が高い方策,すなわち非両立関係にある方策としては,ルールの整備あるいは強化に関する取り組みが選定される傾向にある.一方,景観性のみに評価が高い方策の特徴にある一定の傾向はみられない.

3.自主防犯ボランティア団体に対する重点的支援策に関する研究

(1)背景と目的

自主防犯ボランティア団体の結成数は2004年頃から急増しているが,継続的活動に対する不安要素はいまだ多く存在している.そこで本研究では,自主防犯ボランティア団体の活動に対する不安要素を把握し不安心理の構造を明らかにすることで,重点的支援策を提示することを目的とした.

(2)研究方法

分析に用いるデータは,茨城県日立市の自主防犯ボランティア団体に対するアンケート調査によって得た(81団体,回収率は91.2%).質問項目は活動に対する不安・不満に関する12項目であり,それぞれ「思わない」から「思う」の4件法で回答を得た.各項目の偏相関係数を算出し,関係性があれば1,関係性がなければ0と置き換え,ISM (Interpretive Structural Modeling)によって隣接行列および可到達行列を導出した.ここからさらに有効グラフを導出し,結果を読み取ることで重点的支援策を検討した.

(3)結果

①団員の積極性を促す工夫は支援策を講じるうえで必ず盛り込むべき内容である.②活動方法に対する知識・技術を習得するための工夫は活動の方向性を決定づけるのに効果的である.③経費不足が全体的な活動不安を高める最大の原因であるため,本当に地域防犯活動が必要な地域への活動資金の集中投資が必要である.すなわち,地域の犯罪リスク評価に基づき地域防犯活動の必要性を判断するための基準を確立する必要がある.