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平成23年度前学期・低平地地圏環境学特論 講義レポート







平成23年度前学期・低平地地圏環境学特論 総括
1. はじめに

 「低平地地圏環境学特論」は、佐賀大学大学院工学系研究科・博士前期課程都市工学専攻における専門科目として、平成23年度前学期に筆者の担当としては初めて開講したものです。都市工学専攻は建築・土木融合組織のため、マニアックな専門講義の内容ではどうしても受講生に対し得手・不得手の環境構築を余儀なくされてしまいます。このため、講義内容についてずいぶん悩みましたが、自身の専門性より出でるマニアックな講義内容は今後別の専門科目である「土質力学特論」に集約させ、むしろこれまでの教養教育運営機構・主題科目「有明海沿岸低平地域の諸問題」で培ってきた経験に基づいて、いっそこの内容の都市工学的専門性を高めたいと思うようなりました。

2. 本講義の目標到達度と内容

1)「低平地とは...である。」
2)「低平地に生じる問題には...がある。」
3)「低平地における...の問題の解決のためには...の方法がある、あるいは考えられる。」
4)「自分自身の専門性の視点から、低平地の...の問題の解決に際し、...の解決策を提案する。」

 本講義を経て、もし第三者に「低平地」のことを尋ねられた場合に、上記のような流れでさらりと答えることのできる人材の育成を目指したいと思いました。

3. 講義の進め方

 担当教員の所属先である佐賀大学低平地沿岸海域センターが同・低平地防災研究センター時代から引き継ぐ下記の課題群を5トピックに取りまとめ、15コマの講義数を5分割・5ローテーション化しました。次に、各トピックの担当を受講生に選択していただきました。今年度は28名の受講生からなり、一つのトピックにつき5〜6名の配置となりました。1ローテーションにおける第1週目では、全体に対し担当教員からトピックに関する話題提供を行い、第2週目ではトピック担当受講生と担当教員による担当受講生プレゼンテーション準備会議を開き、第3週目では担当受講生による選択トピックのプレゼンテーションを行っていただきました。

a)低平地の成因・特徴
b)地盤工学的課題
c)水質、水資源管理学的課題
d)低平地における正負の課題とこの解決
e)東日本大震災

4. プレゼンテーションの採点、質疑応答表の作成とプレゼンテーション資料の修正

 さらに、担当受講生による選択トピックのプレゼンテーション時には、現在の学会や専攻・学科で行われている優秀講演者制度にならい、プレゼンテーション担当受講生以外の受講生および担当教員によるプレゼンテーションおよび質疑応答に関する採点を行いました。しかる後に寄せられた質疑を質疑応答表にまとめるとともに、プレゼンテーション資料の修正を図り、これらを最終的なレポートして受理することで、講義の採点に結びつける方法を用いました。これらの方法を踏襲して感じたことは、受講生の採点判断はわりとシビアなこと、受講生にとってはこれまでの評価のみされる立場から評価する立場の責任感が芽生えたのではないかと思えること、質疑応答表の作成およびプレゼンテーション資料の修正を図ることで、さらなる研究(論文)の基礎が学べたのではないかと思えること、などです。

5. 新用語「低平地化」の定義とこの使用方法

 また、本講義を通じて「低平地化」との新たな用語が生み出され、この使用法の定着化が図られました。この用語を佐賀大学低平地沿岸海域研究センターに所属する受講生が使うならともかく、他研究室・他分野を専攻する受講生がさも正確かつ当たり前のようにプレゼンテーションで用いるのは感極まり、脱帽の限りでした。

6. 反省点

 詳しくは受講生による授業評価アンケートの結果を待ちたいですが、まず採点基準に設けた「質疑応答は明瞭であったか?」について曖昧化させてしまったことです。この趣旨は、担当受講生によるプレゼンテーションの後に質疑応答の時間帯を設けており、ここでの活発な質疑応答を期待してのことでしたが、実際には質疑応答時間帯中に思いのほか質疑が出ませんでした。筆者の座長職の至らなさです。また、本来は講義期間中に質疑応答表および修正版プレゼンテーションの再公表まで行って、受講生および担当教員の間の合意形成を図るのが終着点のところ、ここまでに至らなかったことです。

7. ベストプレゼンテーター等の発表

 上記4.の採点に基づいて、下記の受講生ならびにトピックグループがベストプレゼンテーターならびにベストプレゼンテーショングループに輝きました。各トピックグループの内容については下段の一覧をご高覧いただけると幸いです。また、全体を通じて採点は僅差であり、平均点における小数点第4位レベルの差であったことを申し添えます。

7.1 トピックごとのベストプレゼンテーター

トピック@:江口  克成君(田口研究室)
トピックA:山ノ平 光成君(坂井研究室)
トピックB:矢野  和也君(荒木研究室)
トピックC:小峰  直幸君(清田研究室)
トピックD:黒木  怜奈君(外尾研究室)

7.2 ベストプレゼンテーショングループ

トピックD:東日本大震災とその復興策

石丸裕佳子君(外尾研究室)
片江  享平君(末次研究室)
黒木  怜奈君(外尾研究室)
鳥巣  綾美君(丹羽研究室)
吉川  景子君(小島研究室)

7.3 トップ7プレゼンテーター

第1位 黒木  怜奈君(外尾研究室)・トピックD
第2位 矢野  和也君(荒木研究室)・トピックB
第3位 鳥巣  綾美君(丹羽研究室)・トピックD
第4位 石丸裕佳子君(外尾研究室)・トピックD
第5位 江口  克成君(田口研究室)・トピック@
第6位 山ノ平 光成君(坂井研究室)・トピックA
第7位 吉川  景子君(小島研究室)・トピックD

8. おわりに

 受講生の中には、自身の選択トピックに関する資料収集のために直接現地に赴き調査を進めてくれた皆さんがいました。例えば、下段の各トピックの表紙部に記念写真の形で見て取れます。担当教員の期待を上回る皆さんの取り組みだったと感極まっています。色々と至らなかった点は何卒ご容赦下さい。皆さんの今後の修士論文・修士製作が今からとても楽しみです。健康第一に今後も研究に勉学に、さらには資格に就職に頑張って下さい。

担当教員 日野 剛徳
佐賀大学低平地沿岸海域研究センター

平成23年度前学期・低平地地圏環境学特論
受講生による講義プレゼンテーション資料および質疑応答表

■トピック@の話題提供テーマ:
・低平地の観察記・体験記
・オランダ・キンデルダイクとイタリア・ヴェネツィア

■トピック@の担当者:
荒田 耕平君(後藤研究室)
泉   竜斗君(三島研究室)
江口 克成君(田口研究室)
大塚 一翼君(三島研究室)
後藤 祐貴君(小島研究室)
峰 沙由梨君(平瀬研究室)

■担当者によるプレゼンテーション資料の内容:
1)低平地オランダにおける都市計画
2)ヴェネツィアの都市形成
3)ヴェネツィアの仮面カーニバル
4)ヴェネツィアにおける生活の一見
5)ヴェネツィアの現状(いま)
6)佐賀平野干拓の歴史
7)成富兵庫茂安の手がけた利水事業
8)福岡県柳川市

■担当教員の感想等:
 トピック@ローテーション開始時に準備した話題は:1)低平地の観察記・体験記;2)オランダ・キンデルダイクとイタリア・ヴェネツィア、であった。
 まず、「低平地」とは、「海や湖沼・河川などの水域にあって、水位変動の影響を受けやすい環境下にある平地」と定義される。海抜ゼロメートル地帯の低地が地盤沈下の影響などを伴って一層低地化する、などのことが具体例である。このことを実感してほしくて準備したのが低平地の観察記・体験記、である。
 オランダおよびイタリア・ヴェネツィア両国の話題を準備したのは、これまでの担当教員の学習の範囲では、前者は自然を克服する取り組みの印象を持ち、後者は自然との共生による取り組みの印象を持ったためである。この理解は果たして正しいか確認したいのも本話題提供の狙いであった。

■トピックAの話題提供テーマ:
・有明海沿岸低平地域の形成史
・軟弱地盤と広域地盤沈下のメカニズム

■トピックAの担当者:
荒木 渉  君(帯屋研究室)
池田 俊貴君(帯屋研究室)
市村 和仁君(外尾研究室)
村本 亮太君(坂井研究室)
山ノ平光成君(坂井研究室)

■担当者によるプレゼンテーション資料の内容:
1)有明海沿岸低平地を始めとする様々な平野の形成史
2)有明海の形成史
3)有明海の特徴
4)軟弱地盤における広域地盤地下のメカニズム
5)圧縮と圧密の違い

■担当教員の感想等:
 トピックAローテーション開始時に準備した話題は:1)有明海沿岸低平地域の形成史;2)軟弱地盤と広域地盤沈下のメカニズム、であった。
 まず、有明海沿岸低平地域の形成史を論じるに際しては、有明海の海象とここに注ぐ河川との間の相互作用のことを知らなければならない。このためには、そもそも有明海の海象とは何か、この現象はいつから始まっていたのか、などのことに基づいて論じる必要がある。
 上記の経緯で形成された軟弱地盤上では、地盤沈下問題に接する機会が少なくない。一口に地盤沈下といっても、この現象を引き起こす原因は次の二つに大別される。一つは地球内部の地殻変動によるものであり、他の一つは地表層が自然現象や人為的行為で収縮・陥没するものである。さらには、地表層を構成する土の違いにより、圧縮と圧密のメカニズムの違いに関する理解も必要になってくる。

■トピックBの話題提供テーマ:
・諫早湾調整池に面する市町村の地盤沈下問題と水管理問題の総合解決
・巨勢川調整池の機能と東名遺跡の保存対策

■トピックBの担当者:
澤田 大樹君(古賀(憲)研究室)
末吉 聖次君(日野研究室)
中原 健太君(荒木研究室)
浜崎 祐貴君(古賀(憲)研究室)
藤原 拓真君(古賀(憲)研究室)
矢野 和也君(荒木研究室)

■担当者によるプレゼンテーション資料の内容:
1)東名遺跡とその保存対策
2)佐賀平野の特徴と水害、巨勢川調整池の果たす役割
3)都市部の調整池
4)諫早湾沿岸域の概要
5)諫早湾調整池に面する市町村の地盤沈下問題と総合水管理問題
6)諫早湾潮受け堤防の開門調査

■担当教員の感想等:
 トピックBローテーション開始時に準備した話題は:1)諫早湾調整池に面する市町村の地盤沈下問題と水管理問題の総合解決;2)巨勢川調整池の機能と東名遺跡の保存対策、であった。
 諫早湾沿岸域では平成12年度頃に深刻な地盤沈下問題が生じ、平成13年度・同14年度の2箇年にわたって調査・解決に取り組み、このときの経験を話題提供した。経験の際に実感したことは、地盤に生じる問題は水との密接な関わりがあり、水に関する理解なくして地盤問題の解決はあり得ない、であった。
 東名遺跡の保存対策もまさに水に関する理解なくして地盤問題の解決はあり得ない、の典型例であり、とりわけ地盤工学の分野では新たな課題に直面した。つまり、地盤の酸化還元現象が遺跡保存に及ぼす影響のことであり、これに伴い真の地盤改良技術が生まれた課題として、担当教員自身は同プロジェクトを極めて高く評価している。

■トピックCの話題提供テーマ:
・軟弱地盤における有明佐賀空港の建設
・有明海沿岸道路建設の始動

■トピックCの担当者:
杉田 公和君(柴研究室)
小峰 直幸君(清田研究室)
聶   集祥君(柴研究室)
富永 惇  君(小島研究室)
東島 潤  君(石橋研究室)
三吉 隆博君(井嶋研究室)

■担当者によるプレゼンテーション資料の内容:
1)公共事業
2)有明佐賀空港
3)有明海沿岸道路
4)九州新幹線西九州ルート
5)軟弱地盤対策工法

■担当教員の感想等:
 トピックCローテーション開始時に準備した話題は:1)軟弱地盤における有明佐賀空港の建設;2)有明海沿岸道路建設の始動、であった。
 いずれのプロジェクトも軟弱地盤の克服が共通キーワードに挙げられるプロジェクトであり、完成あるいは着工に至るまでの経緯を理解してほしいのが狙いであった。また、前者と後者の軟弱地盤対策工法には特徴的な違いがあり、前者では物理的圧密促進工法が主体となる軟弱地盤対策が図られ、後者では化学的固化工法が主体となる軟弱地盤対策が図られようとしている。数多の地盤改良工法に関する理解の整理も本話題提供の狙いであった。
 また、上記の話題提供では触れなかったが、担当受講生のプレゼンテーションでは新たに九州新幹線西九州ルートが取り上げられ、公共事業に関する議論に話が沸いた。

■トピックDの話題提供テーマ:
・東日本大震災とその復興策

■トピックDの担当者:
石丸裕佳子君(外尾研究室)
片江  享平君(末次研究室)
黒木  怜奈君(外尾研究室)
鳥巣  綾美君(丹羽研究室)
吉川  景子君(小島研究室)

■担当者によるプレゼンテーション資料の内容:
1)東北における過去の地震
2)東日本大震災の概要
3)東日本大震災による低平地の形成
4)被災地復興計画
5)未来への可能性と計画案

■担当教員の感想等:
 トピックDローテーションのみはこれまでのトピックCまでとは勝手が違い、担当教員自身もゼロからの知見の出発であること、講義進捗の調整を余儀なくされたこと、などのことにより、事前準備は担当受講生および担当教員のみで進め、しかる後の担当受講生による直接のプレゼンテーションとなった。
 東日本大震災と低平地の関係は実に興味深い。東日本の太平洋沿岸に接する平野部のほとんどで地盤沈下が生じ、海岸・河川堤防決壊後の今日では太平洋の満潮時に地域が冠水する現象がマスコミ報道に詳しい。この地盤沈下の原因には、地球内部の地殻変動と地表層の圧密・圧縮の同時発生により引き起こされたと考えられている。
 本トピックを通じて、「低平地化」、あるいは「...低平地化した。」なる新たな用語やこの使用法が生み出された。今は復興に向けて全力を傾ける段階にあるが、ある程度落ち着きを取り戻した段階では確実に「低平地化」による諸問題の到来が待ち構えていることは疑いのない事実である。

■備 考:
1)上記の各図面をクリックすると元資料をダウンロードできます。
2)上記の各パワーポイント資料における各参考資料については出展の明記を心かげていますが、必ずしも十分でない可能性があります。ご容赦下さい。
3)上記の各資料については教育目的以外での使用・転載等は一切お断りしますので、ご注意下さい。
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