平成15年度卒業研究発表会 概要集より


有明海沿岸道路の建設に伴う軟弱地盤・環境の対策に関する研究

空閑聡子

1.研究目的

佐賀低平地では種々の道路建設や計画が進められているが,有明粘土地盤から成る全国でも有数の軟弱地盤地帯であり,不同沈下,すべり破壊,交通振動を始め,様々な問題を潜在している.本報では、佐賀県芦刈地区で実施されたボーリング試験結果に基づいて,堆積環境と土質特性について検討し,今後の有明海沿岸道路に伴う軟弱地盤環境および工法に関する対策について考察する.

2.佐賀県芦刈地区の堆積環境と土質特性

対象地域では東西に沿う道路の建設に伴い,23本の事前ボーリング調査が実施されている.これらのボーリングをもとに,既往の研究に基づいて地層区分を行った.牛津川以西では上から蓮池層上部,有明粘土層,三田川層,阿蘇‐4火砕流堆積物,中原層,川副層の順に堆積している.牛津川以東では有明粘土層,蓮池層下部,以下西側と同様に堆積している.このうち6本のボーリング調査では,通常の土質試験に加えて塩濃度,pH,酸化還元電位(ORP)に関する簡易分析が行われている.土質試験結果から,コンシステンシーの垂直分布では自然含水比が液性限界を上回っており,鋭敏比はほぼ20以上,圧縮指数は2を上回ることが確認され,高鋭敏性・高圧縮性の地盤であることがわかる.一方,塩分等簡易試験の結果から,対象地域は強い塩分溶脱の状況にある.

3.酸化還元電位に関する検討

酸化還元電位は,白金電極からなるセンサー部分を試料に密着後,大幅な数値変動を示すことがある.検討を行った結果,測定開始後5分程度で値が収束することが認められたので,ここでは5分後の測定結果を用いている.有明海湾岸低平地域における浮泥・底泥は,表層に2~3cmの堆積が重なることによって還元状態に転じる.このような堆積の連続によって形成された有明粘土層では,深さを増すほど還元状態が強まると考えられるのが,実際はそのような関係は得られなかった.この現象について八谷・日野らは,有明粘土層とその下層の帯水層との間で酸素に富む地下水の鉛直混合による影響を考えている.また日野らは,有明粘土層に極度の酸化還元環境の変化を与えた場合,強酸性を示すことを報告している.

4.軟弱地盤対策に関する考察

対象地域では,物理的安定処理工法による道路計画線下の地盤改良が行われている.その事前・事後調査が実施された.事前・事後ボーリング位置の数mの違いによって,各地層の層厚に違いが認められる.同一T.P.における事前・事後の各値を比較すると,明瞭な変化が認められる.この原因の1つとして,有明粘土層では水平的連続性に富む鬼界‐アカホヤ火山灰が狭在されており,この層準が注目した深さに位置して水道となり,事前とは別の地表・地下水を新たにもたらした可能性がある.

5.まとめ

本報で得られた知見を要約すると次のとおりである:1)対象地域は強い塩分溶脱の状況にあり,地盤環境が2次的に変化している.2)酸化還元電位の鉛直分布は強還元状態になく,弱還元状態である;3)物理的圧密促進工法における事前・事後の試験結果から,同一T.P.における塩濃度,pH,酸化還元電位の値について変化が認められた.