平成16年度卒業研究発表会 概要集より

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有明海北西岸低平地における
地盤の堆積環境と土質特性に関する研究

原弘行

1.はじめに

佐賀低平地では有明海沿岸道路事業が進められているが,有明粘土地盤からなる全国でも有数の軟弱地盤地帯であり,不動沈下,すべり破壊,交通振動を始め,さまざまな問題が潜在している.本研究は,佐賀県の嘉瀬,久保田,芦刈,福富の4地区で実施された地盤調査結果に基づいて,堆積環境の観点から対象地域における地盤環境および土質特性について検討し,地域的な特徴を見極める.さらに同様の観点に基づいて,軟弱地盤対策について考察するものである.

2.地盤調査位置の決定と内容

佐賀低平地の東西に沿う建設計画が進んでいる.計画路線は約10kmであり,この範囲でほぼ2.5km間隔,計4ヶ所における50m級の基準時地盤調査を設けることを提案し,実施に至った.計画路線始点から終点にかけての4ヶ所の結果をそれぞれ嘉瀬コア,久保田コア,芦刈コア,福富コアと呼ぶ.既往の研究に基づいて地層区分を行った結果,対象地域の地層は,表層から蓮池層上部,有明粘土層,蓮池層下部,三田川層の順に堆積しており,軟弱粘土層としては表層から平均14mの厚さで堆積しているのがわかった.通常の地盤調査に加え,塩濃度,pH,参加還元電位に関する簡易分析,さらに安定同位体等理化学分析が実施されている.

3.塩濃度に関する検討

海成有明粘土層の塩濃度は20〜40g/Lと考えられているが,図-1から嘉瀬・久保田コアは塩濃度がほぼ10g/L以下であり,塩分溶脱の進行が早く,地盤環境の変化が著しい地域と考えられる.芦刈・福富コアの塩濃度は,有明粘土中心付近で20g/Lを超え,福富コアでは40g/Lを超える値を示している.芦刈・福富地区は塩分溶脱の進行が遅く,地盤環境の変化が遅いと考えられる.簡易環境試験結果から,嘉瀬・久保田地区と芦刈・福富地区で地域的に2分出来ることが示唆された.

4.鋭敏性・圧縮性に関する検討

対象地域の自然含水比は高く,液性指数は1を上回っており,鋭敏比の値は嘉瀬コアで10以下,他の3コアで10〜20程度の値を示した.また,圧縮指数は通常の沖積粘土ではCc=0.3〜1.0の範囲にあるとされているが,対象地域のそれは1〜2,場合によっては2以上の値を示すものであり,圧縮性の高い地盤であるといえる.佐賀低平地における既往の沖積粘土研究に照らせば鋭敏性が低いという課題が残るが,全体的に高鋭敏性・高圧縮性の地盤といえ,かつ嘉瀬地区と他の3地区とに2分出来ることが示唆された.

5.軟弱地盤対策に関する一考察

軟弱地盤対策を次の3つに大別して考えた;1)無処理(含杭工法等),2)物理的圧密促進工法(ドレーン等),3)化学的安定固化工法(深層混合処理工法等).地盤環境の変化が現状のもので留まっているとすれば,嘉瀬地区ではすべての工法選択が可能であり,他の3地区では3)が効果を増すように考えられる.地盤環境の変化が現在も進行中の場合,周辺の地盤環境に及ぼす影響を考慮して嘉瀬・久保田地区では1),他の地区では3),のような選択が迫られることになるかもしれない.工法選定にはコスト面が最も重要性を帯びるが,今後環境コストをどう評価するかが鍵となる.

6.まとめ

本報で得られた知見を要約すると次の通りである.(1)嘉瀬・久保田地区は塩分溶脱の進行が早く,芦刈・福富地区は塩分溶脱の進行が遅い.(2)鋭敏性・圧縮性の観点からは,嘉瀬地区と他の地区とに2分される.(3)軟弱地盤対策については,今後地盤環境の変化が現在の状況に留まっているのか,あるいは進行中のものかを見極めることが重要と考える.