平成16年度卒業研究発表会 概要集より

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GMSを用いた軟弱地盤中塩濃度の
移流拡散現象に関する基礎的研究

坂本令

1.はじめに

有明海沿岸低平地の地盤環境問題として,海成粘土層の塩分溶脱現象に伴う地盤劣化が指摘されている.人為的な地下水揚水で生じた粘土中間隙水と帯水層中地下水との混合現象が要因の1つと考えられている.堆積環境に関する最近の研究から,その要因以外の影響も考えられるようになってきた.本研究は,GMS(Groundwater Modeling System)による数値解析ツールを用い,沖積粘土層における塩分の移流拡散現象がその深度分布に及ぼす影響を検討した結果について述べるものである.

2.GMSの導入について

有明粘土の塩分溶脱現象に関する既往の解析研究では,水流は1.5次元として扱われていた.流れは粘土層では鉛直,透水層では水平の2方向へ向けられる.そのため,鉛直方向の水流の前提を余儀なくされる解析方法であった.有明粘土層の貝殻が良好な形で存在することから前述は自ずと無理な条件と化す.このことから,塩分溶脱現象の解析に際しては自由度を与える必要に迫られた.そこで,3次元解析が可能なGMS(Groundwater Modeling System)を導入するにいたった.

3.塩濃度の深度分布特性

現世における有明海水の塩濃度は20〜30g/Lであり,かつ現世の有明海に認められる海象は約8,000年前から生じていたと推定される.しかるに本研究で対象とした地域における堆積当初の有明粘土中間隙水の塩濃度は,少なくとも20g/Lは有していたと考えられる.図-1に示す各地点での塩濃度の深度分布から,分布には地域性が認められる.安定同位体地球化学的検討から,有明粘土中間隙水の年代は比較的新しいものも見いだされており,当該地域の塩分溶脱現象も同様のことを秘めている可能性がある.

4.塩分溶脱メカニズムの解析的検討

「芦刈地区」で得られたデータをもとに,モデル地盤の作成を行った.水の流れや透水性を考慮し1)人為的な地下水揚水;2)粘土層中の砂層の存在:3)鬼界アカホヤ火山灰の水平連続性,などが存在する場合も併せてモデルに取り入れ,シミュレーションを行った.図-2に計算結果の一例を示す.これは拡散のみで生じる塩濃度の深度分布を計算したものである.塩濃度の解析結果と実測深度分布を比較すると,両者に同様の分布が現れるためには,解析の条件に通常地盤調査等で得れる情報とは異なる設定を考慮する必要があることなどがわかった.

5.おわりに

今後さらにモデル地盤の設定,解析条件の検討を重ね,実現象の解明に向かう必要がある.